個人事業で運営していた動物病院について、新しく法人を設立して、その法人で運営していくことを「個人事業の法人なり」といいます。
経営が軌道に乗ってきて、ある程度の規模となると、法人成りお考えになったことがあるのではないでしょうか。
では、法人なりをする目的はどのようなことでしょうか。
法人なりのメリットは、「信用の向上」、「節税効果」 と言われています。
一般的に個人事業より法人の方が信用力があるために、金融機関の融資は法人の方が受けやすい傾向にあります。
また、法人なりによる節税には種々の方法があります。(具体的な手法は次回のコラムでご紹介します。)
融資が受けやすくなり、税金を減らせる。法人なりをすることによって、よりお金を残せるようになりますので、どこかのタイミングで必ず法人なりをする必要があるのではないかと考えています。
では、法人なりをすることによるデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。
法人は個人事業と比較して事務手続きが煩雑になり、一定のコストがかかります。
法人は個人事業より提出書類は増えますし、会計処理や税金の申告についてもより複雑になります。これらの処理を司法書士や税理士に依頼することによるコストは覚悟しなければなりません。
また、個人事業で社会保険に加入していない場合には、法人になることで必ず加入しなければならず、これにもコストがかかってきます。
また、個人事業では赤字の場合は税金が生じませんが、法人は赤字であっても最低7万円の税金を納める必要があります。
上記のように、法人なりにはいくつかのデメリットもありますので、これらも抑えておきましょう。しかし、それ以上の大きな節税効果が期待できるとなれば、これらは些細なことではないでしょうか。
よく節税のために法人なりをするに○○円程度の利益が出たタイミングが良いなどとの記載を散見しますが、果たして本当にそのタイミングが最適でしょうか。
一つの目安となるかとは思いますが、たとえ同じ利益が出ていたとしても、動物病院によってその経営状態は様々です。売上高、従業員数などの様々な要素によりクリニックの運営がなされていますので、一概に○○円の利益が出ているので法人なりをした方がよいとは言えなのではないかと考えています。
実際の経営状況や今後の事業展開について精査して、法人なりをした場合の影響を十分シミュレーションして、そこに存在するリスクも勘案したうえで法人なりをするかしないかを検討するのがよいでしょう。
法人なりによる節税は大きな効果が期待できますが、一定のコストがかかるというデメリットもありますので、目の前の節税効果にばかり気を取られて、後に法人なりを後悔することのないようにしましょう。