これまでの「徹底節税」シリーズでは基本的に法人なりをした先生を対象とした節税手法をご紹介してきましたが、今回は個人事業者である先生向けの節税として使える「小規模企業共済」についてご紹介します。
「小規模企業共済」とは、以前にご紹介した倒産防止共済と同じく、中小企業基盤整備機構という経産省所管の独立行政法人が運営する共済制度です。
この共済は、小規模な個人事業主や法人の役員がご勇退なさる際に、それまで積み立てていた掛金に応じて共済金を受け取れる制度で、経営者のための退職金制度となっています。
小規模企業共済は小規模なクリニックを対象とした制度ですので、誰でも加入できるわけではありません。常時雇用する従業員が5人以下であれば加入することができます。
今後従業員の増員を予定している場合などは、加入要件を満たさなくなってしまう恐れがありますので、お早目の加入をお勧めします。
小規模企業共済の掛金は全額が所得控除となります。掛金の上限は月々7万円となっていますので、最大で年間84万円の所得控除となり、これに所得税・住民税の税率をかけた金額の節税効果が見込まれます。
仮に、所得税・住民税の税率が30%の方が、掛金を最大84万円とした場合、年間25万円程度の節税となります。
満期の概念はないので、ご勇退の時までこの効果が続くことになります。
小規模企業共済の掛金は中小機構によって運用されていますので、基本的にご勇退時には掛金以上の共済金を受け取れることになります。
ただし、掛金払込月数が240ヶ月(20年)未満で任意に解約した場合など、受け取れる金額が掛金以下となってしまうこともありますので注意が必要です。この元本割れの恐れがある点が小規模企業共済の最大のデメリットとなっています。
ご勇退時に受け取ることができる共済金には税金がかかってしまいます。しかし、共済金を一括で受け取る場合には退職所得扱いとなり、この退職所得は前回の記事でもご紹介した通り、税金面でとても優遇されていますので、掛けていた時に受けられる節税効果の方が大きくなることの方が多いでしょう。
小規模企業共済は小規模な事業者が退職金を外部に積み立てておくものですので、上手に使うためのポイントは倒産防止共済と同じく「ある程度寝かしておける資金か否か」です。
掛けているうちは節税となりますが、税金が減る額以上に資金が外に出て行ってしまいます。任意で解約すれば元本割れをすることにもなりますので、基本的には退職時または20年が経過するまで引き出せません。
計画的にかけられるかどうかがポイントとなってくるでしょう。
以上のように小規模企業共済はしばらく寝かせて置ける資金がある場合には相当有効な節税手法となっています。まだご加入されていない場合、一度加入のご検討をなさってみてはいかがでしょうか。
弊所では加入に際してのご相談も随時お受けさせて頂いております。ご検討される場合にはご相談頂ければ幸いです。